GDPの正体:「ビジネスの未来」
「コロナ禍で今期のGDPは…」
新聞やテレビのニュースでよく見聞きしますが、GDPってどの位重要なのでしょうか?
確かに、「給与に直結する数字」と言われれば重要と感じますが、経済はGDP以外の要素でも良くならないのでしょうか?
今回紹介させて頂く本は、GDPを中心とした現代の経済に対する考え方と、「真に豊かに生きるに値する社会」について書かれています。
・本のタイトル:ビジネスの未来 エコノミーにニューマニティを取り戻す
-著者:山口 周 先生
この本からは「倫理観」を学べます。
この本以外でも著者は倫理観を大切にしていて、普遍性ではなく、独自性を活かす重要性を書いた本を出されています。
著者は「(今までの)ビジネスはその歴史的使命を終えつつある」と論じています。
私たちは今、何をしたら良いのか?
それを考えさせてくれる本です。
GDPは「恣意性」の含まれた数値
GDPは「政治的調整」が謀られてしまう数値です。
(経済支援を多く受けるため、等の判断で参照元が変わります)
最終的にはドルベースで算出されますが、「為替レート」か「物価水準」かで10%以上差が出ます。
(現在の日本は「0.5%」の上下で騒がれている)
GDPは「100年ほど前」の「世界恐慌後の経済把握」を目的に導入された数値です。
現代社会を全てGDPで判断して良いのでしょうか?
① 物質的貧困の解消
現在の「経済の低成長」は、文明が発達したからです。
直近ではコロナも影響していますが、先進国全体の労働生産性上昇率は1960年代のピーク(8%)以降は下降トレンドです。
2000年にはほぼ全ての先進国が2%を下回っており、現代の発展は完成形に近づいている、ということを表しています。
② イノベーションによる失業が格差を拡大
「駅の切符切り」や「高速道路の収受員」の方達は、みんな職を失ってしまいました。
イノベーションは「富の移転」を起こし、「ごく一部の人がさらに儲かる市場(GAFA)」に変わっただけです。
③ 「需要の飽和」を延命することは「破壊」と同義
マーケティングにより「新たに問題を生み出す」ことが出来れば需要の飽和は延命可能です。
しかし、「もっと使わせろ」「捨てさせろ」の戦略を続けては、環境問題が重視されている現代社会に合わない(非倫理的である)上に、いずれ資源は枯渇します。
(物質的貧困を社会から無くす、という)普遍的な問題が解消されている現代社会では、GDPだけを追うビジネスは使命を終えつつあります。
「やりがい」「格差」「環境」などの、これまでのビジネスで解決が難しいものがこれからの社会の課題です。
「普遍」から「希少」へ
日本の子供の「相対的貧困率」(標準的な生活を送ることができない子供の率)は13.9%で、7人に1人が貧困状態です。
【相対的貧困の子供の例】
・親が病気で家事をしなければいけない
・食費を切り詰めるために、母親が十分に食事をとっていない
・金銭的理由で大学進学を断念
・家計の為にほぼ毎日アルバイトをしている
また、5万人未満の罹患者数と定義される「希少疾病(罹患する人が希少な病気)」の治療法や特効薬開発も難易度の高い問題です。
現在の社会システムで解決できていない課題に対しては、「そうせざるにはいられない」という「人間性に根ざした衝動」しかない、というのが著者の主張です。
人間にある「感情」を経済社会に埋め込む。
私達にできることは、まずは身近な仕事に「人間性」を埋め込み、小さな輪を少しずつ拡げていくことで社会に貢献することではないでしょうか?